出典:(公社)ひょうご観光本部フォトライブラリー

全国的にも有名な有馬温泉や城崎温泉、世界文化遺産に登録されている姫路城など、多くの魅力的な観光資源を保有する兵庫県。

バラエティに富んだ気候や風土から“兵庫県は日本の縮図”とも言われています。

そんな兵庫県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、25品目以上の伝統工芸品が存在します。

この記事では、その中でも経済産業大臣によって「伝統工芸品」として指定されている6品目をご紹介します。

伝統的工芸品とは?
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること

本記事の内容は、令和4年(2022年)2月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。

播州そろばん

播州ばんしゅうそろばん」は、兵庫県南部(播州と呼ばれる地域)の小野市を中心に作られている伝統的なそろばんです。

そろばんは室町時代末期に中国から長崎県を経由して、滋賀県の大津に伝わりました。

安土桃山時代、豊臣秀吉の三木城(現在の兵庫県三木市)攻めに際して、大津に逃れた三木の住民たちが、そろばんの製作技法を習得して地元に持ち帰り製造をはじめたことが、播州そろばんの起源とされています。

100を越える製作工程は専門の職人たちによって分業化されており、繊細な手作業から生まれるそろばんは、使いやすさやたまはじきの良さはもちろん、美術品としての美しさも備えています。

品名播州そろばん
よみばんしゅうそろばん
工芸品の分類文具
指定年月日昭和51年(1976年)6月2日


丹波立杭焼

丹波立杭焼たんばたちくいやき」は、兵庫県篠山しのやま今田こんだ周辺で作られている、日本六古窯にほんろっこようの一つにも数えられる陶器です。

平安時代末期頃に誕生して以来、主に湯呑や皿、鉢といった生活容器が多く作られてきました。

焼成過程で薪の灰を被り、釉薬ゆうやくと溶け合うことで生まれる“灰被はいかぶり”という独特の色・模様や、器の表面を削って稜線りょうせん模様を作る“しのぎ”という技法が特徴です。


※日本六古窯:日本古来の陶磁器窯のうち、中世から現在まで生産が続く代表的な6つの産地の総称

素朴な風合いや美しい発色が印象的で、観賞用としても人気の高い焼き物です。

品名丹波立杭焼
よみたんばたちくいやき
工芸品の分類陶磁器
指定年月日昭和53年(1978 年)2月6日


出石焼

出石焼いずしやき」は、兵庫県豊岡市出石地区で作られる磁器です。

国内で生産される磁器の中でも、珍しいほどの透きとおるような白さが特徴で、“これこそ磁器中の磁器”と言われるほどです。

諸説ありますが、天明4年(1784年)に伊豆屋弥左衛門いずややざえもんが出石町に土焼窯を開いたことが出石焼の起源だといわれています。

その後、寛政11年(1799年)に周辺の柿谷で白磁はくじの原料となる陶石とうせきが発見され、本格的な磁器製造がはじまりました。

明治時代以降は、繊細で華麗な彫刻や、絵付けが施された器が作られるようになりました。

現在の代表的な製品は花器や茶器で、菊の花などの模様を掘り込んだものが典型となっています。

品名出石焼
よみいずしやき
工芸品の分類陶磁器
指定年月日昭和55年(1980 年)3月3日


播州毛鉤

播州毛鉤ばんしゅうけばり」は、兵庫県西脇市周辺で製造されている魚釣り用の毛鉤です。

毛鉤とは疑似餌ぎじえの一種で、虫に似せて作られています。

天保年間(1830年~1844年)に京都から播州へ製作技法が伝わった後、農家の副業として生産されるようになりました。

1cm足らずのかぎに数種類の鳥の羽を巻き付け、金箔や漆によって仕上げられる播州毛鉤は、釣り具として精巧なだけでなく、芸術性も高い逸品です。

現在は、国内で生産される毛鉤の9割が西脇市周辺で作られており、多くの釣り人が愛用しています。


疑似餌ぎじえ:魚釣りの際に用いる、普段魚が食べない物で人工的に作られた餌のこと。

品名播州毛鉤
よみばんしゅうけばり
工芸品の分類その他の工芸品
指定年月日昭和62年(1987 年)4月18日


豊岡杞柳細工

豊岡杞柳細工とよおかきりゅうざいく」は、兵庫県豊岡市周辺で作られている柳のかご細工です。

豊岡市を流れる円山川まるやまがわ周辺に自生するコリヤナギなどを編み込んで作られ、衣類などを収納する箱である柳行李やなぎごうりやかごバッグが代表的な製品として知られています。

起源は弥生時代にまでさかのぼるとされ、天日槍命あめのひぼこのみことという朝鮮半島の新羅しらぎという国の王子が、日本に柳細工を伝えたことにはじまるといわれています。

その後、江戸時代に豊岡藩主・京極高盛きょうごくたかもりが杞柳細工を保護奨励したことをきっかけに、全国的に広まっていきました。

自然素材を活かした優しい風合いと、丈夫さや軽さなどの実用性が魅力です。

品名豊岡杞柳細工
よみとよおかきりゅうざいく
工芸品の分類木工品・竹工品
指定年月日平成4年(1992 年)10月8日


播州三木打刃物

播州三木打刃物ばんしゅうみきうちはもの」は、兵庫県三木市周辺で生産されている刃物です。

“打刃物”とは、炉で熱した金属をハンマーで打つことで形作られる刃物のことで、日本刀などと同じ製法で作られます。

播州三木打刃物が発展するきっかけとなったのは、天正6年(1578年)からはじまった羽柴(豊臣)秀吉による三木城攻め(三木合戦)です。

焼け野原となった三木の町の復興のため、大工職人や大工道具を作る鍛冶職人が集まったことにより、大工道具の生産が盛んになりました。

ゆえに、播州三木打刃物では特に大工道具が有名で、のこぎりのみかんなこて小刀こがたなの5品目が伝統的工芸品に指定されています。

品名播州三木打刃物
よみばんしゅうみきうちはもの
工芸品の分類金工品
指定年月日平成8年(1996年)4月8日